日本のロックバンドです。知る人ぞ知る「子供ばんど」。子供ばんどの存在を知らなくても、うじきつよしを知っている人はいるかもしれない。ただ彼も最近あまりテレビに出なくなったのでうじきの存在も若い人にはあまり知られていないかも。
子供ばんどは1973年に結成。当時はまだ高校生バンドだった。この頃のアマチュアバンドはヤマハ主催のオーディションイベントを目指すバンドが多く、「ポピュラーミュージックコンテスト(略してポプコン)や関東地方であればヤマハのローカルオーディション大会の「EAST WEST」を目指す。子供ばんどもEAST WESTに出場。グランプリを得たのがメジャーデビューのきっかけになった。
日本語ハードロックをかっこよくしたバンド
当時のロックは日本語ロックというものになんとなくカッコ悪い感があった。日本のバンドなのにワザワザ英語で歌う、というバンドが少なくなった。今の音楽シーンからするとちょっとわからない感覚かもしれないが、「日本語でロックなんてダッセ~」という感覚だった。
そんな中、子供ばんどは全編日本語。しかも方向性としては正当なハードロックなのでバンドの存在そのものがとても新鮮だった覚えがある。彼らの日本語ロックは全く違和感なく、むしろ日本語であることの方が重要だった。またカバー曲としてローリングストーンズの「サティスファクション」や「ジャンピング ジャック・フラッシュ」、ザ・フーの「サマータイム・ブルース」、リック・デリンジャーの「ロックンロール・フーチー・クー」を意訳して日本語で歌っている。これがまたオリジナルの雰囲気を壊すことなくノリノリで心地よい。
唯一無二のライブバンドとして
メンバーはうじきつよし(Vo./G)、谷平こういち(Vo./G)、湯川トーベン(Vo./B)、山戸ゆう((Vo./D)がオリジナルメンバーと言っていい。当時の人気音楽雑誌「ミュージックライフ」は毎年年末に年間ベストプレイヤーみたいなものを投票で決めていたが、うじきつよしはボーカルで毎回トップ。たしかギター部門でもトップだった記憶がある(リードギターの谷平こういちも上手かったのだがうじきが目立つのだろう)。
子供ばんどはレコード作成よりもライブバンドとして力を注いで例えば1981年の年間ライブ数は1,000回、1988年は2,000回。年間1,000回ってどーゆーこと? 一年365日で一日に3回近くの回数をこなしたということでしょうか? 2,000回となるとその倍? 普通じゃないですね。子供ばんどの名前がお茶の間にも知られるようになったのはおそらく1986年の「北斗の拳 劇場版」の主題歌「ハートオブマッドネス」。これで初めて彼らの存在を知った人も多いのでは。
バンドはその後、多少のメンバー変更を繰り返しつつ、1988年に活動休止。おそらくこの前後からうじきつよしが俳優業や番組司会などバンド以外の活動が活発になっていると思う。うじきつよしがロックバンドのヴォーカルだと知らない世代が増えたのもこの頃で、ある番組でうじきが即席バンドを組んで歌ったら出演者の一人が「うじきさん、歌上手いっすね!」と言ったのに対して、うじきが「これが俺の本業だよ!」と答えていたのを見た覚えがある。私はこの時「彼が子供ばんどのヴォーカルということを知らない世代が増えたのだな」と感慨深く思ったのを記憶している。バンドは2011年に復活。2015年までに2枚のアルバムを出している。
子供ばんどは前述のように基本は正統派ロック。ハードロックという部類なのだけれども、彼らの楽曲には茶化した歌詞、リズムがあり、ただひたすら突っ走るハードロックとは違った味がある。ライブバンドらしく、粗削りな部分も個人的にはそこに好感が持てる。時代の流れを考えるとこんなバンドが再び出てくるとは思えないけど、日本のロックシーンを語る上ではなくてはならないバンドであることは間違いない。(※文中敬称略)