映画

「ドリーム・シナリオ」夢と現実のはざまで人生が狂ってしまった男の物語

 多くの人は眠ると夢を見る。「昨夜は夢を見なかった」と言う人でも忘れているだけでほとんどの人が夢を見るのだそうだ。そしてどんなにリアルな夢を見ても目覚めればそれが夢だったと認識できる。一般的には現実と夢を区別できているし、数日たつとそれがどんな夢だったかも忘れてしまうことも少なくない。

 夢と現実がごっちゃになる、という病気があるそうだ。「ナルコレプシー」と呼ばれるもので別名「眠り病」。ただこの病気はどちらかと言うと寝入りばなに夢を見てそれが現実と区別がつかなくなる、というものでわかりやすい現象としては金縛りがある。覚醒時に夢か現実がの区別がつかなくなるようなものだと心的外傷、つまりトラウマがあるがこれは眠りで見る夢とは少し分野が違うだろう。

 ニコラス・ケイジ主演「ドリーム・シナリオ」は、ある日突然、冴えない大学教授ポール・マシューズがいろんな人の夢に登場する、というお話。特に何をするわけでもないが唐突に皆の記憶に残る「有名人」になる。大学の授業は大盛況。履修者以外の学生も授業に出席する。SNSでも人気者になり、ソフトドリンクのCM依頼や念願だった出版の話も出る。ところがお話は急転直下、今度は夢で悪事を働きだす。これまでとは打って変わって人々は彼を忌み嫌いだす、というストーリー。こういう映画はどういう分野になるのでしょう? ブラックホラー映画と言っている人もいたが、普通のホラー映画とはだいぶ違う。不気味で悲しい展開と言うべきだろうか。

徐々に追い込まれていく恐ろしさ

 本人が知らないところで急激に人気者になり、何かの拍子に一気に落とされる、というのは例えば芸能界や一部のスポーツ選手など現実の世界でもある話。ただこれなどは本人やその周辺の人による言動や行動によって落とされることがほとんど。現実の世界で夢に出てきて悪さをしたからと言ってその本人を忌み嫌うようなことはないだろうが、自分の知らないところで勝手にイメージが作られていくのはなんとも不気味で怖い。映画の主人公ポールのように目立つことが嫌いで「何もしてないのに」人気者にされ、「何もしてないのに」落とされてはたまったものではないだろう。言い訳も謝罪もできない。

 映画の中で主人公ポールが周りからどんどん追い込まれていく展開を見ていてなんだか人種差別問題や学校で起こるイジメを思い浮かべてしまった。特にレストランで食事をしていると店員から他の客の迷惑になるから出て行ってくれと言われ、男性客からも食べ物に唾を吐かれるシーンなどはまさに黒人差別問題を思い浮かべてしまう。今でも世界のどこかで実際にある人種差別はこれと同類で本人が何をするでもなく、ただ存在するだけで差別されてしまう。この映画にはどこかそういう人間の悲しくて残酷な部分を見てしまった気がする。この映画が人種差別を意識したかどうかはわからないが、個人的な嫌悪感と周りの同調意識、それにSNSも加わって勝手に人のイメージを作り出す恐ろしさは感じられる。

主人公同様にニコラス・ケイジも…

 主演のニコラス・ケイジと言えばヒット作の「ナショナル・トレジャー」を思い出す人も多いと思う。ただ最近はどう見てもB級としか思えないような映画にも出ている。その事情の一つが、この人はものすごく浪費家なのだそうで、さらに5億6千万円の税金未納を抱えていた。これらを返済するために46本の映画に出演し、また家や高級車を売却して現在は返済したとか。また4度の離婚と5度目の結婚をして現在のお相手が日本人だとか。ドリーム・シナリオの主人公さながら、波乱万丈の人生ですな。

ドリーム・シナリオ予告編

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なんべぇ
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