Let the music do the talking(邦題:熱く語れ) 1980年
I’ve got the rock’n roll again(邦題:忘れじのロックンロール)1981年
Once a rocker,always a rocker(邦題:いつまでも熱く)1983年
メンバーのドラ〇グ問題やジョー・ペリーの脱退で急激に活力を失っていくエアロスミス。その状況と同時進行で、ジョー・ペリーは自らのバンド「ジョー・ペリー・プロジェクト(以下、JPP)」を立ち上げた。
アルバム「Let the music do the talking(邦題:熱く語れ)」1980年
JPPデビューアルバムである。エアロスミスでは「Night in the ruts」のレコーディングが遅々と進まず、ジョー・ペリー自身のやりたいことが具現化できない状態にまで陥っていた。彼はレコーディング途中でエアロスミスを脱退。「Night in the ruts」の制作時にジョー・ペリーが曲作りを行い、かつまだ録音されていなかった音源を元に自らのバンドを結成して音楽づくりに取り組んでいく。それがこのアルバムだ。ジョー・ペリーはJPPのアルバム作りに関して、レコード会社と「5~6週間でアルバムを作り上げる」という話をしたという。プロデューサーはおなじみのジャック・ダグラス。発売はコロンビアレコード。
以下、ジョー・ペリー以外のメンバー
・ラルフ・モーマン(リードヴォーカル)
アルバム作成時のヴォーカルだったが、アルコールに関して問題を抱えていたため、レコーディング後のツアー中にバンドを解雇された。このあと、ツアーを引き継いだのはジョーイ・マーラ。
・デビッド・ハル(ベース)
エアロスミスのトム・ハミルトンが病気休養となった2006年には代役ベースにも担った。
・ロニー・スチュアート(ドラムス)
セッションプレーヤー。
曲リスト
1.Let the music do the talking
2.Conflict of interest(*1)
3.Discount dogs
4.Shooting star(*1)
5.Break song(*2)
6.Rokin’ train
7.The mist is rising(*1)
8.Ready on the firing line
9.Life at a glance(*3)
(*1)リードヴォーカル=ジョー・ペリー
(*2)インストルゥーメンタル
(*3)リードヴォーカル=ラルフ・モーマン&ジョー・ペリー
ジョー・ペリー曰く「アルバムタイトルにもなっている1曲目“Let the music do the talking”は曲自体がすべてを物語っている」という。話すことなど何もない、全てが自分のスケジュール、自分のペースで仕事がしたい。それを現わしたのがこの曲なのだという。
また「“Rokin’ train”は自分のルーツであり、“Ready on the firing line”や“Life at a glance”は何か月も頭の中で反響していたリフを中心に作った」とも語っている。如何にエアロスミスでフラストレーションを溜めていたかがわかる。
全体的なイメージとしては「どストレートのロックンロール」。とにかく最初から最後まで突っ走っている感じで「箸休め」の無い料理のよう。これまで考えに考えていたことを一気に吐き出したかのようなアルバムになっている。個人的に好きな曲は“Break song”である。インストルゥーメンタルでジョー・ペリーのギターがさく裂。エアロスミスではまず聴けない曲だろう。なお、「Let the music do the talking」はジョー・ペリーがエアロスミスに再合流したのちのアルバム「Done with mirror」で別バージョンとして聴くことができる。このアルバムは25万枚を売り上げ、全米ビルボードでは最高47位まで上げた。
アルバム「I’ve got the rock’n roll again(邦題:忘れじのロックンロール)」1981年
JPP2枚目のアルバム。メンバーは1枚目のアルバムからヴォーカルが変わったが他は同じメンバー。ジョー・ペリーほどの著名なギタリストであれば、それなりに著名ミュージシャンとの共演も難しくはないように思えるが、なぜかJPPはそういう人寄せ的な動きは一切しない。あくまでも船頭はジョー・ペリーということか。
・ジョー・ペリー(ヴォーカル&ギター)
・チャーリー・ファレン(リードヴォーカル&ギター)
・デビッド・ハル(ベース)
・ロニー・スチュアート(ドラムス)
曲リスト
1.East coast, west coast
2.No substitute for arrogance
3.I’ve got the rock’n roll again
4.Buzz buzz(*1)
5.Soldier of fortune(*2)
6.TV police
7.Listen to the rock
8.Dirty little things(*1)
9.Play the game
10.South station blues(*2)
(*1)リードヴォーカル=デビッド・ハル
(*2)リードヴォーカル=ジョー・ペリー
曲作りについてはメンバーとの共作が目立つようになり、アルバムの作りの方向性としては前作よりも軽めなアメリカンロックという雰囲気。正直言って、想像とは全く違っていた。前作のようなエネルギッシュな感じが無く、かといってエアロスミスで感じられるような「どす黒さ」もない。またジョー・ペリーのギターはどちらかと言うと感性や時には指癖でギターを弾いてしまうところが彼らしさなのだが、そういうものが少し抑えられた感じがする。発売元は前作と同様、コロンビアレコード。しかし売り上げ枚数など、ビジネス的に成功したとは言えない結果となった。
アルバム「Once a rocker, always a rocker(邦題:いつまでも熱く)1983年
JPP3枚目のアルバム。前作があまり売れなかったこともあり、またジョー・ペリー自身がドラ〇グ問題を抱えていたことも影響してか、このアルバムはコロンビアとの契約には至らず、MCAレコードからの発売となった。またメンバーも前作から全員が入れ替わっている。
・ジョー・ペリー(ギター)
・カウボーイ・マッハ・ベル(リードヴォーカル)
・ダニー・ハーグローブ(ベース)
・ジョー・ペット(ドラム)
※1984年のJPPツアー時にはエアロスミスのギター、ブラッド・ウイットフォードが加わっている。
曲リスト
1.Once a rocker, always a rocker
2.Black velvet pants
3.Women in chains
4.Four guns west
5.Crossfire
6.Adrianna
7.King of the kings
8.Bang a gong
9.Walk with me Sally
10.Never wanna stop
全体的には前作の路線。ストレートなアメリカンロックで構成されている。T・レックスのカバー曲「Bang a gong」を除いてジョー・ペリーとヴォーカルのカウボーイ・マッハ・ベルの共作となっている。ちなみにマッハ・ベルの「カウボーイ」はニックネームで名付け親はジョー・ペリー。カバー曲「Bang a gong」の歌い方(特に出だし)はマーク・ボランそっくり。また「Walk with me sally」はタイトルから想像できる通りリトル・リチャードの「Long tall Sally」のオマージュ。こういった曲構成もあり、ただ力任せに押しまくる曲ばかりではない。個人的には前作よりも楽しめるアルバム。売り上げは4万枚ほどだった。
JPPの今後とエアロスミスの関係
これら3枚のアルバムを制作後、ジョー・ペリーとブラッド・ウイットフォードがエアロスミスに復帰し、事実上、JPPは解散した。
JPPを聴いて思うのはジョー・ペリー自身、音楽との向き合いにはものすごく真面目な人なのだと感じさせる。2005年から度々エアロスミスの活動休止状態となった際も、その都度JPPを復活させて、音楽活動を休止することはほとんどなかった。JPP自体、必ずしもビジネス的に大成功しているわけではないが、おそらく彼の中では成功とか失敗というレベルで測れるものではないだろう。彼自身にとっての貴重な自己表現の場面、実験場なのだ、と思わせてくれる。
これはあくまで個人的な想像なのだが、スティーブン・タイラーがライブを引退するとした今、おそらくJPPは活発になっていくのではないか。それはエアロスミスを差し置いて、という意味ではなく、あくまでジョー・ペリーとJPPの活動延長線上にある未来として、十分あり得る動きだと思う。
参考:Wikipedia(英)
エアロスミス 温故知新Vol.10
エアロスミス 温故知新Vol.8