かつてのF1の世界では車体やドライバーのレーシングスーツにデカデカとタバコメーカーのロゴが張られていた。フェラーリなどは一時期、タバコブランド名を冠したチーム名になっているなど、F1とタバコはかなり密接だった。
また日本のプロ野球選手の多くが攻守交替時にダグアウト裏でタバコを吸うというのは当たり前だった時期がある。
さらにスポーツの世界だけではなく、実生活でも駅ホーム、空港、電車内、飛行機内、職場など、どこでもタバコを吸うことが出来た。職場での喫煙に関しては、喫煙所ではなく、職場のデスクで吸えたのだから、今の若い人たちには信じられないぐらいどこでもタバコが吸えた。
今ではタバコが吸える場所を見つけるのが難しいのではないか。スポーツの世界に話を戻すと欧州開催が中心のF1では広告規制によりタバコブランドは原則として撤退した。プロ野球でも球場内が禁煙となっているのがほとんどだろう。タバコを吸える場所があるとしても施設から遠く離れた場所にあるとか、本当に人目につかない場所でひっそり据えられていることが多い。
喫煙所と呼ばれる場所はかなり人目に付きにくい、雨天時では雨もしのげないような場所に設置されている、ということもある。傘をさして吸いに行く喫煙者の姿がなんとも涙ぐましい。まあ、そんなわけでスポーツの世界だけではなく世の中的にタバコは締め出されている。
競技種目のよって考え方も変わる
スポーツの世界でも喫煙については温度差があり、野球の世界では比較的おおらかにとらえていた感がある。一方で陸上競技では全体的にタブー視されている。メンタル部分も結果に影響しやすい短距離やフィールド選手には喫煙者もいる、という印象だが、中長距離の世界ではほとんどいない、というか、皆無ではないか。仮に中長距離選手に喫煙者がいたらコーチや関係者が「タバコを止めれば何分の1秒か早くなるかもしれない」と厳しく指導すると思う。要するに心肺機能を重視する競技の世界ではタバコを嗜む余地はないが、メンタル部分が影響するスポーツについてはややそれが薄れている感がある。とはいえ、最近のスポーツ界は青少年への影響、というものに神経を使うので、社会的に締め出されているタバコとスポーツはできるだけ遠ざけたいという気持ちは一致している。
オリンピック選手に対する処遇の是非
さて、2024パリオリンピックにおいて、未成年の代表選手が喫煙をしていた、とのことで代表をはく奪されるという話。いろいろコメントされているが、主な意見は下記2点。
・未成年でタバコは法律違反なのだから仕方がない、という意見
・未成年とはいえ喫煙ぐらいで4年に一度の代表をはく奪されるのは酷すぎないか、という意見
私はこの件について、2つの意見ともに論点が違うと思う。一方は法律の是非論。確かに法律ではそうですね。ただそこをどう解釈して運用するかは当該団体が考えるべきでしょう。
もう一方はいわば情緒論。これまた外野があれこれ言ってもなぁ。所属する世界で考え方は様々なのだから。例えばこれが世界選手権レベルだったらどういう意見になるんでしょうか。「まあいいじゃん、次頑張れば」とか? 選手にしてみればそういう問題じゃないような気がする。
競技団体の判断に任せるべき
この件については当該選手が所属する団体が決めることであり、ましてや政治家や実業家がガタガタいう話ではない。所属する団体がこういう理屈です、という話が正しい判断であるべきだと思う。確かにオリンピックという国を代表する選手に関する是非論なので何等か言いたい気持ちもわかるが、外野があれこれ言っても何も変わらない。あれこれ言う方がかえって選手を苦しめないか?
起こったことに対する処遇は関係者に任せるしかないが、なぜこれを未然に防げなかったのか、未成年選手に対する指導、教育ができなかったのか、という所属団体の在り方のほうに問題があるように思えますが、どうでしょう?