スポーツで国の代表となって世界を相手に戦うことは容易ではない。サッカー日本代表も今では当たり前のようにワールドカップに出場するが、初出場までは長い道のりだった。1993年の「ドーハの悲劇」を経て、その4年後にようやく初出場したのはご承知の通り。
ラグビーもワールドカップに毎回のように出場していたが、ワールドカップ史上、最多失点を記録したのは日本。1995年にニュージーランドと対戦し、145点を奪われた(日本は17得点)。この頃のチームはほとんどの選手が日本人だったこともあるが、当時はこれでもアジアでは最強だった。
選手を取り巻く環境は変化している
現在ではサッカーもラグビーも代表になるのはほとんどがプロ選手だが、以前はアマチュアとプロの中間のような形の「実業団」と呼ばれる立場の選手が多かった。これは日本特有と言っていいが、会社組織の中にいながら、競技を続けることができるシステムだ。日中は通常の業務をしつつも、一定の時間で仕事を切り上げ、競技者となって練習に臨む。会社によってその雇用形態は様々だが選手(社員)は競技を続けながら安定的に収入が確保できる。一方で会社側はスポーツという形で社会貢献に取り組む姿勢をアピールできるメリットがある。いまでも陸上競技や社会人野球はこの方式が多い。会社と選手との契約関係にもよるが、競技引退後に社員として会社に残る選択ができるケースが多く、選手側のメリットは大きい。
最近ではラグビー強豪国の著名選手が日本チームとしてプレーするケースが増えている。実はラグビー選手にとって日本でのサラリーは高額で安全な日本で安定的な競技生活を送ることができる。またラグビーの場合、3年間その国でプレーすれば、その国の代表になることができるなどの規定がある。もちろん選手各々の実力向上もあるが、日本のラグビーの強さにはこういった背景もあるだろう。日本代表と言いながら海外ルーツの選手が多いことに目くじら立てる輩もいるが、選手にとってメリットがあるのなら、問題視することでもないように思う。国によって、また競技によっても条件は様々なのだから。
史上最弱チーム アメリカ領サモア
サモアというとラグビーが強い独立国サモアを真っ先に思い浮かべるが、この映画の舞台はそのサモアではなく、アメリカ領サモアだ。位置的には独立国サモアの南東にある小さな島。この映画を見るまでアメリカ領サモアという地域のことは全く知らなかった。
アメリカ領サモアは当時、FIFA最弱のチーム。サッカーワールドカップA代表の試合でまだ初勝利がなく、それどころか1得点も挙げたことが無いチーム。過去にオーストラリア相手に31点を献上。史上最弱のポンコツA代表なのだ。そこにワケアリ監督が就任。あまりの弱さに監督も挫折感しかなく、途中で匙を投げる寸前までいくが、なんとか持ちこたえて予選に臨む、というストーリー。
映画ではこの手のストーリーはよくある題材だが、この話は実話をもとに構成されている。決して裕福ではない地域だけに恵まれた競技生活を送れる選手はいない。ほとんどの選手が普通に働きながら選手として練習し、試合に臨む。またストライカーとして「第三の性」を自認する選手が登場する。この選手も実在の選手なのだそうだ。
ポンコツチームの「サクセスストーリー」と言ってしまえばそれまで。しかしどの競技にもありうる黎明期の姿でもある。映画では面白おかしく構成されているが、アメリカ領サモアにしてみれば、今なお続いているストーリーと言えるかもしれない。