絵画

フィロス・コレクション「ロートレック展 時をつかむ線」日本美術の影響力

 最近、テレビやYouTubeなどで海外から観光で日本にやってくる外国人のインタビューを聞く機会がある。日本に興味を持ったきっかけを聞かれると多くの人の答えが「アニメや漫画を見て」という。実際、各国どこでも日本のアニメや漫画が人気というのはよく聞く。そこから日本に対するあこがれになり、アニメの中で描かれる日本の風景や「おにぎり」「ラーメン」「寿司」を実体験したい、となるわけだ。まあ、日本人としては悪い気はしない。

アンリ・マリー・レイモン・ド・トゥールーズ=ロートレック=モンファ

 時は遡って19世紀後半。当時、浮世絵などジャポニズムの流行で日本に興味を持った画家は多い。ゴッホやモネ、マネ、ドガがジャポニズムに影響された。この頃の画家の中では、特に個人的に好きな画家がロートレック。何が好きなのかというと自分でもはっきりわからないが、おそらく彼が描く絵が二次元的で現代のイラストや漫画、アニメにつながるものを感じるのだろう。そういうところが日本的なのでは、と思っている。
トゥールーズ・ロートレックは19世紀に活躍した画家。正式な名前はアンリ・マリー・レイモン・ド・トゥールーズ=ロートレック=モンファ。先祖は9世紀に遡る伯爵家。何の不自由のない名家の出、ということになるが、この時代の名家にありがちな血縁の濃い結婚が繰り返される影響でロートレック自身は先天的に脚の障害を負って生まれる。父親が軍人で長男だったロートレックは本来、家を継ぐはずだったが、それができなかった。幸い、絵の才能があることを見出され、画家の道に進んだ。

 現在、東京新宿にある「SOMPO美術館」ではロートレック展が行われている(2024年9月23日まで)。フィロス・コレクションと呼ばれるものでギリシャ人のフィロス夫妻のコレクションが展示されている。
いくつか写真を撮ったけど、こういう展示会はほとんどが撮影禁止。その中で撮影可だったものを挙げていきます。

アリスティード・ブリュアン1893年
エルドラドのアリスティ―ド・ブリュアン 1892年
ジャルダン・ド・パリのジャヌ・アヴリル1893年
ディヴァン・ジャポネ1893年
ラ・ルヴュ・ブランシュ1895年

現代アートに通じるアイディア

 ロートレックの絵の特徴はモデル対象の特徴を強調して描く画家だと思う。モデルとなる人にしてみると、自分の特徴というのは場合によっては「気に入らないところ」であり、強調されすぎると「そんなはずない」と否定したくなる部分でもある。しかしロートレックはそこをあえて強調する。 

 その象徴とも言えるのが例えばロートレックがポスターやパンフレットを手掛けたイヴェット・ギルベールの絵。ギルベールは出来上がった絵に対して「自分はこんな風じゃない!」と突き返したそうだ。ただ実際の舞台の写真と絵を見比べると「あーこんな感じだな」と思わずうなずいてしまう。本人は認めたくないのだろうけど。

 またギルベールに関して秀逸なデザインがある。ギルベールは舞台で黒い長手袋をつけるのがトレードマークなのだが、彼女のアルバムを描いたものにギルベール本人は描かずに黒い手袋とお化粧パフだけを描いた。これなんかはおしゃれで現代でも通用しそう(展示されていたが撮影不可の作品だった)。

そのほか娼館の中の日常を描いた「彼女たち」など、現代ポップアートや写真家のようなアイディアを見るのは楽しい。興味ある人は是非。

おまけ フィンセント・ファン・ゴッホ

 SOMPO美術館にはゴッホの「ひまわり」が常設展示されています。7枚存在したが、うち1枚は戦争で焼失した(しかも日本で焼失!)という。残ったうちの1枚が日本にあってすぐに見られるというのは名誉なことですね。

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