今年はセミが大量発生する年のようで。と言っても日本の話ではなく、これはアメリカの話。アメリカには13年周期、17年周期でそれぞれの一斉にセミが大量発生する周期ゼミとか素数ゼミと言われるもの。見た目の特徴は赤い目と日本のアブラゼミの羽を透明にした感じ。サイズは大きくても4㎝ほどと言うから日本でよく見るアブラゼミと比較して二回りほど小さい。
日本ではずっと幼虫は7年間地中で過ごす、と言われてきたが実は長くても5年ほどらしい。その5年後に土から出てくるにしても、一斉に出てくるわけではなく、それぞれのタイミングで出てくる。しかしアメリカの周期ゼミは羽化する年に一斉に地上に現れるのだ。しかも2024年は13年ゼミと17年ゼミが221年ぶりに同時に現れる年。その数たるや延べ1兆匹! ちなみにアフリカなどで発生するバッタの大量発生でも1つの群れで700億匹ぐらい。周期ゼミは4月~6月にかけて羽化するので今まさに発生中ということになる。
もはや公害レベル?
一度、テレビで周期ゼミの発生状況を取材したテレビ番組を見たことがあった。おそらく13年ゼミの発生だったのだろう。とにかく街中ではセミの鳴き声の大合唱。街路樹はもちろん、街灯にも大量に寄ってくる。日本でも夏真っ盛りになると雑木林などはセミの大合唱で100デシベルに達するものすごい音量になる。100デシベルというと地下鉄の騒音とほぼ同じ。普通に会話できないですね。
日本人にとってはセミの鳴き声は「あぁ~夏だねぇ」などと風流に感じるところもあるだろう。しかし「風流」などという感覚が無いアメリカ人。虫の音色はうるさいと感じる人たちも少なくないお国柄なので迷惑でしかないだろう。まあ、日本でもこれだけ多くのセミの大合唱となれば風流などと言っていられないかもしれない。周期ゼミの終わりには大量の死骸が出て、これまた処置が大変。ほうきで履いて捨てるわけだが小山になるような量になる。
それに日本でも夏の終わりに発生する「セミ爆弾」と呼ばれる、あれ。玄関先で死んでいると思いきやいきなり羽ばたくあの現象。昆虫が得意不得意関係なく驚かされた経験があるはず。あの現象だって多発するはず。自然の摂理とはいえ、そこに暮らす人たちは大変だろう。
歓迎している人たちもいる
ただそうやって迷惑がっている人ばかりではない。このセミが大量発生する年、地域では「セミ祭り」が行われる。「今年はセミがやってくる!」というわけでパレードなどいろいろな催し物でセミを歓迎する。考えてみると最も短い周期で13年ということは、13歳の人は初めてセミを見るわけで、それはそれで貴重な体験だろう。
取材されたお菓子屋さんでは、なんとセミをチョコでコーティングしたものをのせたセミケーキも。そのほかタコスに入れたり揚げ物にしたり。東南アジアや東アジアで昆虫を食べる習慣はよく聞くが、アメリカでも食虫の文化があるとは。あまり一般的ではないかもしれないが珍しい食品、怖いもの見たさの類なのだろう。
言語から見るアメリカ人と昆虫
アメリカ人にとって昆虫というのはあまり親しみのないもの。それは言語からも垣間見える。日本では少々昆虫に詳しくない人でもカブトムシとクワガタムシぐらいの区別はつくだろうし、名前と実物はだいたい一致すると思う。しかし英語ではどちらも“Beetle”。それどころかカミキリムシもコガネムシも含めて甲虫はすべてBeetleなのだから関心を持てという方が無理かもしれない。同じようにショウリョウバッタもトノサマバッタも全部Grasshopper。ヘタすると昆虫は全部Bugでおしまい!となる。
昆虫好きの私としては周期ゼミでアメリカが話題になっている現場をぜひこの目で見てみたいと思うのであります。