海外では人気があっても日本ではイマイチ知名度が薄いバンドがいる。J・ガイルズ・バンドもその一つではないだろうか。1967年に結成され、1975年にはヒット曲「Must of got lost」もあってアメリカではライブバンドとして人気を博したが日本では今一つ。初来日は1980年。私の知る限り、これが最初で最後の来日のはず。
この来日の翌年、バンドはEMIに移籍して大ヒットアルバム「Freeze Frame」を発表する。この曲は日本でもヒットしたので聞いたことがある人は多いだろう。これまでブルース色が強かったが、ここで一気に方向転換。アルバム全体がアメリカンライトな感じでこの頃の音楽シーンに合わせた曲調で、結果万人受けした感がある。私も最初にこのアルバムを聴いたとき、違うバンドなのかと思ったほど。昔からのファンの間では賛否両論あったらしい。日本での目立ったヒットと言えばこの頃だろう。ヘタすると「一発屋」なんて思われていたりして。
ライブバンド最高傑作はライブアルバム(自薦)
私が最も好きなアルバムは「Live Full House」だ。J・ガイルズ・バンド初のライブアルバムで1972年の作。収録時間は8曲35分と短いが最初から最後までノリノリだ。1曲目「First look at the purse」は、”女の容姿なんか気にしない、最初に見るのは財布の中身だぜ!“という何ともお下劣な歌詞から始まり、次の「Homework」はオーティス・ラッシュの名曲。”男の夜の宿題“を歌う。なんとも男臭いラインナップなのだ。キーボードのセス・ジャストマンがイントロを奏でる「Pack fair and square」を聞いたときはピアノを弾けない自分が本気で悔しかった。マジック・ディックのハーモニカがカッコいい「Whammer Jammer」はその昔、米軍向けの関東ローカルラジオFENの番組合間に流れた曲。ブルースバンドのカラーが濃厚で最初から最後までピーター・ウルフのダミ声がさく裂しているライブの名盤である。
内部ゴタゴタ。そして…
1981年の大ヒットシングル「Centerfold(邦題:堕ちた天使)」でようやくこのバンドも安定期に入ったかと思いきや、ピーター・ウルフがソロ活動に専念しだして事実上の脱退。1985年には活動を停止してしまう。その後、2000年ごろから再びピーター・ウルフも加わり、再結成の道を歩むが今度は2012年にJ・ガイルズが参加しないと言い出した。バンドはJ・ガイルズという創設者で中心メンバーがいない状態となり、結局新たなギタリストを迎えて活動を続けた。この状態に対してJ・ガイルズは訴訟を起こし「自分(ガイルズ本人)がいないのにJ・ガイルズ・バンドを名乗るな!」というところまで発展。大揉めに揉めたが、結局バンド名はそのままで活動(そういえば日本でも中心メンバーが抜けた後のバンド名で揉めるケースはあったなぁ…)。
2017年4月にJ・ガイルズが自宅で亡くなっている状態で発見され、ここにJ・ガイルズ・バンドが完全復活する目は永遠に絶たれた。
最後はロックバンドらしい(?)と言えばそれらしい終わり方。
人気が出ない理由(自説)
これは完全に私見なのだが日本であまり人気が出なかった最大の理由は女性受けしなかった点ではないか、と思う。ブルースバンドが好きだという女性はそれなりにいるのだが、受けの良いバンドは中性的な魅力がある(と思う。女性ではないのではっきりわからないが)。ところがJ・ガイルズ・バンドはそれが、ない。またJ・ガイルズ・バンドは曲全体が粗削りで例えば美しいメロディという感じからはやや遠い。多少粗削りでも泣きのギターソロがあるとか、アルバムに1曲は美しメロディの曲があるとか、そういう一面があれば日本でも人気が出たのではないか、と思う。あとはレコード会社の力の入れ方が少々緩かったかなぁ。誰かがドキュメンタリー映画作って「今、J・ガイルズ・バンドがアツい!」なんてことないかしら。