Get your wings(邦題:飛べ!エアロスミス) 1974年
エアロスミス2枚目のアルバム。デビューアルバムから1年で次のアルバム制作~発表である。このアルバムのトピックとしてはジャック・ダグラスがプロデューサーになったことだろう。その後のエアロスミスの音楽に大きな影響を与えるジャック・ダグラスと組めたのは彼らにとって大きかった。そのためか仕上がりは前作と比較して格段に良くなった。
前回はロックにしては重量感が感じられず、音質そのものも決して良くはなかった。リードギターの音量バランスもリズムの裏に入っているような感じ。このアルバムではそうした全体のバランスが大幅に改善された。
また曲目もその後の代表曲となる作品が多く収録されている。しかしこのアルバムも爆発的なヒットとまではいかなかったようで、バンドの知名度こそ高くなってきていたものの、ビジネス的にはまだ苦しかったようだ。世間に知られるほどのヒットとなるためには3作目「Toys in the attic(邦題:闇夜のヘヴィロック)」まで待たなくてはいけない。8曲収録で38分。ちなみに前作の「野獣生誕」は当初日本で発売されなかったため、このアルバムが日本でのデビュー作となった。
1.Same old song and dance
スティーブン・タイラーとジョー・ペリーによる曲。ジョー・ペリーのボトルネック奏法が心地よい。この曲は今後、ライブで定番曲となっていく。
2.Load of the thighs
スタジオ版ではあまり感じないが、ライブでは後半のジョー・ペリーとブラッド・ウイットフォード双方のギターソロが聞かせどころになる。
3.Spaced
ちょっと構成を考えすぎたのか、変調させることを思いついたのか? なんとなく聞いていいて曲全体のバランスが心地よくない。個人的にはもっとシンプルにしてほしかったな~。
4.Woman of the world
スティーブン・タイラーがエアロスミス加入前にいたバンド「Chain Reaction」にいたころのヴォーカルメンバー、ドン・ソロモンとの共作。
5.S.O.S(Too bad)
イントロが印象的。歌詞はお下劣極まりないです。この曲は後年、ライブでよくやる曲。こういう曲調が後々、彼らの定番になっていく。
6.Train kept a rollin’
R&Bのタイニー・ブラドショーからのカバー曲。もとは完全なジャズ調。これをロック風にアレンジしている。この曲はヤードバーズなど多くのミュージシャンがカバーしていて日本でもシーナ&ロケッツが歌詞もタイトルも変えて「レモン・ティー」として発表している。彼らが尊敬するヤードバーズへのリスペクトからの選曲と言われている。
7.Seasons of wither
その後のエアロスミスのアルバムを通して聞くとわかるのだが、必ず1曲バラード風な曲を入れてくる。この曲がそれに匹敵するのか、あるいはアルバム2枚目ではまだ定番化していないのか?ん~ちょっと中途半端に感じるのは私だけ?
8.Pandora’s box
この曲は珍しくスティーブン・タイラーとドラムのジョーイ・カーマの共作。Seasons of witherも同様だがどういう構成にしようか、と迷っている感じがするのだが。
このアルバムが発売された1974年はハードロック全盛期である。レッドツェッペリン、ディープパープルなどが次々アルバムを発表してメジャーになっていく。同じような路線でレコードを出してもコピーバンドにしかならない。そのためかバンド内でも相当な迷いがあったのではないか。このアルバムを聴いているとそれを感じる。そもそも彼らはライブでパワーを発揮できるバンドなのでスタジオにこもって綺麗に音楽を仕上げるタイプではないと思う。
その後、彼らは自らのスタイルを確立していくのだが、デビュー作からこの2枚にかけては試行錯誤の段階と言える。
エアロスミス 温故知新Vol.3
エアロスミス 温故知新Vol.1