Rocks(邦題:ロックス) 1976年
エアロスミス4枚目のアルバム。このアルバムはバンドにとってはもちろん、音楽シーンにとって貴重なものとなる。これまでの3作は一定のヒット作ではあるが、それでもエアロスミスと言うバンドを確固たる地位には至っていなかった。しかしこのアルバムはバンドをアメリカだけではなく、世界に名だたるビッグネームに押し上げたと言って良い。今回もプロデューサーはジャック・ダグラス。
収録曲の全米シングルヒットは「Back in the saddle」38位、「Last child」21位、「Home tonight」71位。またアルバム自体がプラチナディスクを獲得。2020年にはローリングストーン誌の「史上最高のアルバム500撰」に選んでいる。
1.Back in the saddle
スティーブン・タイラーはこの曲のイメージを「さあ、またロックで盛り上がるぞ」というイメージで作ったそうだ。特徴的なイントロの雰囲気についてジョー・ペリーは「ヘロ〇ンでハイになっていた時、あのリフが浮かんだ」という。使った楽器は6弦ベース。
2.Last child
歌詞のネタはアメリカの大富豪でかつケチで有名なポール・ゲティの孫が誘拐された時の実話エピソードを想像させる(注1)。歌詞はスティーブン・タイラー。独特のギターリフはブラッド・ウイットフォードの作。
3.Rats in the cellar
詞、曲ともにジョー・ペリー。シンプルかつアップテンポなハードロック。前アルバムの「Toys in the attic」と対になるような曲。
4.Combination
ジョー・ペリーによる曲。スティーブン・タイラーとジョー・ペリーのツインボーカルで歌う初めての曲でもある。歌詞内容はジョー・ペリー自身がヘロ〇ンなど薬物でグダグダになった自分、だそうだ。
5.Sick as a dog
出だしのアルペジオが印象的なこの曲はトム・ハミルトンとスティーブン・タイラーの作。流れるようなリードギター、その後の間奏、終わりの余韻など、いつもの粗削りなエアロスミスとは一味違った曲。こういう凝った構成ができるのはジャック・ダグラスの手腕か。
6.Nobody’s fault
ブラッド・ウイットフォードとスティーブン・タイラーの曲。彼らのお気に入りの一つ。ジョーイ・クレーマーは自分がやったドラムの中でも最高の一つと話している。
7.Get the lead out
1978年ごろのライブを聞くとあまり変にアレンジせずにレコード内容に比較的忠実に演奏していますね。
8.Lick and a promise
“He’s out there rockin’ like you wouldn’t believe(あいつはマジでロックしてる!)”という歌詞にもあるように、この曲は「これからロックライブやるぜー」というエキサイトな気分を歌った曲。
9.Home tonight
毎度おなじみのバラード。曲、詞、ピアノともにスティーブン・タイラー。出だしのスティールギターがジョー・ペリーの「らしさ」が出ている。またバンドメンバーに加えてジャック・ダグラスもコーラスに参加している。
アルバム3枚目の「Toys in the attic」では音楽評論家と呼ばれる人たちからあまり評判が良くなかった。Rocks自体も「耳を塞ぎたくなるようなサウンド」「前ヒット作のリメイク」など辛辣な意見もあったがライブでは熱狂的なファン層が出来つつあり、それによって演奏も洗練されていった。実際、私自身、このアルバムを初めて聞いたのは確か15歳ぐらいだったが衝撃を受けたのを覚えている。
ジョー・ペリーは自伝で当時の自分たちをアメリカの究極のガレージバンドで、このROCKSはジャケットに描かれた5つのダイヤモンドがメンバー一人一人の不安や興奮、喜びを現わし、アルバムはその集大成、と述べている。
エアロスミスというと、スティーブン・タイラーとジョー・ペリーが目立ち、他のメンバーは演奏に徹している感もあるが、アルバム作りではメンバー全員が積極的に関与し、アイディアを出し合った集大成なのだ。
エアロスミス 温故知新Vol.5
エアロスミス 温故知新Vol.3
(注1)ゲティが誘拐犯からの身代金を値切ったため、その代償として犯人が孫の片耳を切り落として送りつけた。さらにその身代金をゲティが節税に利用しようと考えたという。また別の孫娘、アイリーン・ゲティは莫大な財産を受け継ぎ、自らの設立した財団から環境保護運動を活発に行う「Just stop oil」に資金を提供している。