Night in the ruts(邦題:ナイト・イン・ザ・ラッツ) 1979年
これまでコンスタントに年1作のアルバムをリリースしていたが。前作Draw the lineから2年。ようやく新譜となった。この2年間でのバンドのトピックスは2点。
1)カリフォルニアジャム2に出演 1978年3月
カリフォルニア州オンタリオ・モーター。スピードウエイで開催された音楽フェスティバル。1974年に初回が開催されている。出演者はエアロスミス、フォリナー、ハート、ボブ・ウエルチ、ジャーニーなど。後に発売される「Live bootleg」にはこの時の演奏が収録されている。
2)映画「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」出演 1978年
ビージーズ、ピーター・フランプトン主演の映画。ビージーズとピーター・フランプトン演じるバンドがビートルズナンバーを歌いながら成長する、というストーリー。エアロスミスは彼らのヒロインをさらう悪の手先として出演。そのほか出演者はアース・ウインド&ファイア、アリス・クーパーなど。映画のサントラ盤からエアロスミスが演奏する「Come together」がシングルカットされた。ちなみにこの映画、セリフはほぼなく、ほとんどナレーションでストーリーが展開され、出演者がビートルズの曲を演奏することに徹した。ビージーズ、ピーター・フランプトン、ビートルズファンのために作った映画という内容。映画の興行は散々だったがサントラ盤は大ヒットした。
3)Live! Bootleg リリース
エアロスミスとしては初のライブアルバム。主に1977年~1978年のライブからピックアップされた。レコードでは2枚組だったがCD化された後は1枚にまとまっている。
※このアルバムについては後日。
当初、Night in the rutsは1979年6月にリリース予定だった。ジョー・ペリーら楽器パートは出来上がりつつも、スティーブン・タイラーの歌詞が出来上がらないという状況からどんどん仕上がりが遅れていった。そして7月。とうとう決定的な決裂に至り、ジョー・ペリーはツアー途中でバンドを脱退。アルバム制作は残ったメンバーと後にメンバーとなるジミー・クレスポなどで行われ、11月にリリースとなった。
1.No surprize
スティーブン・タイラーとジョー・ペリーの共作。この曲を作るのに2か月を要したという。歌詞は「バンドの歴史を歌ったもの」で彼は「この曲はお気に入り」だという。この曲のプロモーションビデオではすでにジョー・ペリーの姿はなく、ジミー・クレスポがリードギターを弾いている。
2.Chiquita
曲はスティーブン・タイラーとジョー・ペリーの共作。プロモーションビデオではNo surprize と同様にジミー・クレスポがリードギターを弾いている(音だけ聞いているとジョー・ペリー風に聞こえる)
3.Remember(Walking in the sand)
アメリカの女性グループ「Shangri-Las(シャングリラス)」1964年ヒット曲のカバー。哀愁漂う曲調がブラックミュージックを思わせるがシャングリラスは白人グループ。エアロスミスのカバーはかなり元曲に忠実。
4.Cheese cake
スティーブン・タイラーとジョー・ペリーの共作。歌詞はエロ炸裂。ギターはボトルネック奏法炸裂。徹頭徹尾、エアロサウンドがさく裂している。
5.Three mile smile
スティーブン・タイラーとジョー・ペリーの共作。こういう曲を聴いているとバンド内がゴタゴタしている感じが全くない。前半はシンプルなロックンロールだが後半の変調したのちのリードギターが聞かせどころ。
6.Reefer head woman
Buster Bennett Trio(バスターベネットトリオ) 1945年のカバー曲。過去のアルバムでもこういった古いブルース曲を取り上げている。彼らの音楽的な原点をうかがい知ることができる。
7.Bone to bone(Coney Island white fish boy)
スティーブン・タイラーとジョー・ペリーの共作。アップテンポなリズム、力でグイグイ押し切る感じが良い。ちなみに”Coney Island white fish”とはニューヨーク市ブルックリンの海岸コニーアイランドのスラングで使用済みコンドームのこと。
8.Think about it
ジミー・ペイジがいた頃のヤードバーズのカバー曲。エアロスミスのライブでも時折、演奏される。特にリードギターのノリが良い。彼らが取り上げる歌詞内容にしてはかなり示唆的。この頃のバンド内部を表現したかったのか、あるいは単にヤードバーズに対するリスペクトか。
9.Mia
スティーブン・タイラーの曲。この曲はスティーブン・タイラーが娘のためにピアノで作った子守唄なのだそうだ。最後の音がエアロスミスの死を告げる鐘の音のように聞こえる、と言うのはスティーブン・タイラー自身の言。
いわく付きの結果となったアルバムだが直接的な原因はバンド内のドラ〇グ乱用だ。曲ができているのに歌詞が無い、アルバムは未完成だが予算が無いからツアーに出ないといけない、ますますアルバムの仕上がりが遅れる、という悪循環。バンド内の雰囲気はさぞ悪かっただろう。
そんな中で作られたアルバムだが個人的には出来が良いと思っている。オリジナル曲はもちろん、カバー曲の選曲もエアロスミスらしさが出ている。バンド内に不穏な空気が流れる中、この完成度は高いと思う。しかしこのあと、ジョー・ペリーの脱退をきっかけにエアロスミスは暗黒期を迎える。
参考:Wikipedia
エアロスミス 温故知新Vol.7
エアロスミス 温故知新Vol.5