音楽

エアロスミス 温故知新Vol.10 再結成!ようやく元の鞘に戻った

Done with mirrors 1985年

 1979年以降、ジョー・ペリー、ブラッド・ウイットフォードという両ギタリストが脱退したエアロスミス。1984年に2人が再加盟する話し合いが始まり、バンドは元の鞘に戻った。このアルバムはオリジナルメンバーそろい踏みとなった記念すべきアルバムである。またゲフィンレコードからの最初のアルバムでもある。なお日本ではこのアルバムから毎回のようにつけられていた陳腐な邦題が付かなくなった。毎回思っていたがあのタイトルは違和感アリ。どう見てもない方が良い。

 また“Done with mirrors”が持つ意味は鏡という幻想とドラ〇グを使う際の道具と言う2つの意味を持つ。またCD中ジャケットは鏡を使って読む反転文字が使われている。

1.Let the music do the talking

 ジョー・ペリー・プロジェクト(JPP)の名義でリリースされた曲をリメイク。歌詞とメロディが変更され、これぞスティーブン・タイラーというヴォーカルの迫力はJPP版とは一味違う。全体的に“エアロスミス版”の方が曲構成にメリハリがあり、洗練された感がある。

2.My fist your face

 これぞ“エアロサウンド”という曲。アメリカのラジオプロモーション用のシングルとしてリリースされた。

3.Shame on you

 スティーブン・タイラーの作。レッド・ツエッペリンを感じさせるリフレインが良い。

4.The reason a dog

 スティーブン・タイラーとトム・ハミルトンの共作。ちょっとけだるい感じのメロディがデカダンを感じさせる。トム・ハミルトンはメンバーの中でも独特な雰囲気を作り出す。もっとアルバムに対して毎回1~2曲関与すべきではないか、と思ってしまう。

5.Shela

 スティーブン・タイラーとブラッド・ウイットフォードの共作。メインの独特のリフはさすがブラッド・ウイットフォードと思わせる。リードギターをジョー・ペリーと交互に弾いている。

6.Gypsy boots

 スティーブン・タイラーとジョー・ペリーの共作。言葉遊びのような歌詞、炸裂するジョー・ペリーのギターはエアロサウンドそのもの。

7.She’s on fire

 スティーブン・タイラーとジョー・ペリーの共作。エアロスミスの代名詞とも言うべきスティールギターが心地よい。

8.The hop

 バンドメンバー全員が関与して作った曲。ノリの良いダンシングミュージックと言う感じの曲はあまりこのバンドではやらないがそれだけにこのアルバムのアクセントになっている。

9.Darkness

 この曲はレコードには挿入されず、CDには挿入された。タイトルの通り、マイナー調メロディとオルガンが何とも言えない暗さを感じさせる。

「もっと時間をかけて作るべきだった」(ジョー・ペリー)

 このアルバムはオリジナルメンバーの再結成という記念すべき時期に作成したにも関わらず、ビジネス的には成功しなかった。バンドメンバーの意見でもジョーイ・クレイマーは「このアルバムは未完成なまま」と言い、ジョー・ペリーも「インスピレーションに欠けるアルバム」としていて、後のインタビューでも「当時の自分たちが作れる最高のアルバムだったが、結果的に最高とは言えない出来だった。もっと時間をかけてじっくり作るべきだった」と語っている。

 その一方で音楽評論家など関係者の間ではそれほど評判は悪くはない。「あらゆる困難を乗り越えたアルバム(ビレッジ・ボイス誌)」「アルバム“Rocks”以来、最高の出来(オールミュージック誌)」「70年代全盛期以来の最高傑作(グレートロックディスコグラフィティ誌)」など、賞賛の意見は多い。実際、私もいい出来だと思っている。歌詞も今までのような、ただエロとドラ〇グを連想させるものばかりではない。エアロスミスらしくない、と言われればそれまでだが、少々哲学的(?)なところもあって新たな側面を見た気がする。

 ショービジネスの世界で、たとえビッグネームでも一時期表舞台から姿が見え無くなれば、復帰に労力を要するもの。特にエアロスミスの場合、バンドメンバーが抜けるという決定的な状況だっただけに、ファンも「今まで通りのパフォーマンスが得られるのか」という疑心暗鬼があったはず。そう簡単に元に戻らないだろう。結果的に言えば、このアルバムは原点回帰のために通過しなければいけないステップであり、次の「Permanent vacation」で開花させることになる。

参考:Wikipedia(英)

エアロスミス 温故知新Vol.11
エアロスミス 温故知新Vol.9

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